大工道具の話          建築用語集
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罫引き(ケヒキ)

 罫引き<材をけびくことによって材に平行な線を印したり、薄い板を割ったりする道具>
   
 ケヒキはこの大工道具の話の中では、すこしばかり外れた道具かもしれません。
と言うのは、ケヒキを主に使うのが建具屋だからです。
大工にとってはケヒキはこく限られたところで使うものですが、建具屋にとっては無くてはならないものです。

 現在でこそ仕事場が独立して、建具屋の仕事場は現場とは離れていますが、
昭和の始めまでは、建具屋も大工現場で仕事をしていました。
かつては、大工が使う材料とともに建具屋の材料も現場に用意され、大工の仕事と一緒に建具細工をしていました。
つまり、建物に使われる材と建具に使われる材は、同じ一本の木より挽き出されたものでした。

 ケヒキは大きく筋ケヒキと、割ケヒキに分けることができます。
筋ケヒキは一種の定規といってよく、材をけびくことによって材に平行な線を印すための道具です。
割ケヒキはケヒキ刃をさらに深く材に入れることによって、材を一定の巾で引きわる道貝です。
筋ケヒキ、割ケヒキとも、基本的な構造は同じものですが、筋ケヒキは印を付けるだけなので、華奢な作りです。
割りケヒキは、挽き割るために力を入れるので、頑丈にできています。
 
 ケヒキ(筋ケヒキ)は右図のような形をしています。
定規板に棹をくさびによって固定し、棹につけられた刃と定現板の間隔を一定のものとします。
この定規板を材に当てて、刃を材に食い込ませるように引けば、材の端から一定の巾の筋が得られるというしくみになっています。

 ケヒキの定規板と刃の間は常に一定です。
一度その長さを決めてしまえば、いちいち計りなおすことなく、同じ長さを求めることができます。
また、刃によってけがくため、墨で付けた線のように太くなることもなく、材も汚さず、精度の高い線となるため、細かい仕事に向いています。

二丁筋ケヒキ
 筋ケヒキにも、いくつかの種類があります。
まず上図のような棹が、一本付いたものです。
これには棹が長い、長ケヒキもあり、幅広物に印せます。

大工が使うものは、多くが2本の棒がついた左図のような二丁筋ケヒキです。
二丁の刃で、とる寸法をそれぞれ決めておくと、チョイチョイと持つ方向を入れ替えるだけで、材の巾、厚さが、道貝を持ち替えることなし決まります。
これは大変便利なものです。

 ケヒキは定規板と刃の間がしっかりとしていれば、その役目をはたすものです。
最近では、クサビではなく、ネジで棹を止めるものが多いようです。
 
鎌ケヒキなら狭い所も大丈夫
 鎌ケヒキは棹に刃をささず、棹と刃が一体のものとなっています。
鎌ケヒキは、棹に刃を差し込んだケヒキではけがけないところでも、けがけます。
刃を仕込んだ筋ケヒキでは、上に出た刃がじやまをして、場所によっては入っていくことができない場合があります。
鎌ケヒキでは刃と棹を一体につくってあるために、この心配はありません。
ケヒキの歴史の中で、これは大きな進歩です。
 
 鎌ケヒキにも、一丁ものと二丁ものがあります。
二丁ものは、筋ケヒキでいった二丁ものとは少々違います。
鎌ケヒキの二丁というと、一枚の刃の上よりもう一枚の刃を重ねたかたちでの、同じ方向での二丁ケヒキとなっています。
これは一度に二本の線が引けるケヒキです。
その二本の線の間も、一定の平行にしておくことができます。

 割ケヒキは、筋ケヒキとは用途が違います。
割りケヒキは、材を引き割ることを目的としたもので、建具屋がこれをよく使います。
割ケヒキでは、筋ケヒキにくらべて刃が大きく出ています。
また定規板、棹ともに厚く丈夫に作られているのは、強い力で材を割るためです。
割ケヒキでは、だいたい8分(24ミリ)までの材を割ることができますが、これには材の両側より刃を入れます。
また薄い材、たとえばベニヤ板なども切ります。
これをノコギリで切ろうとすると、切りにくいばかりか、切り口もきれいなものとはなりません。
しかし、割ケヒキでスッと引いてやると、実にきれいに気持ちよく切れす。

 ケヒキの使い方は単純なものです。
定規板を材の端に当てて、刃の筋をきれいに残すように引く、同一巾で材を割る、といったものです。
割ケヒキはどんな材でも割れるというものではありません。
特に八分の材ともなりますと、素性のよい材を目の方向に割るのが常です。
木理が通った方向に割るのです。

 木理が材の端と平行ならば問題はないのですが、
材端に近づくと深く入った刃は木理を拾ってしまい、定規板が材端から離れるといったことも起ります。
これを嫌って刃を棹に仕込む時に、2〜3度転ばせて、刃の方向が材端から逃げるように仕込む人がいますが、感心しません。
ケヒキの刃はあくまで棹にカネ、材に平行でなくてはいけません。
刃に転びをつけてしまっては、けがくにも、割るにも、転んだ分が太くなってしまいます。
これでは、精密な仕事をしようとケヒキを使った意味が無くなってしまいます。
 
 割ケヒキは関東では片刃、関西では両刃を使います。
前述の曲がりの話からすると、片刃は曲がりにくく、両刃は曲がりやすいものです。
両刃の方が材をきれいに割ることができるから、関西では曲がりやすい両刃を使っています。
腕に合った道具で最上の仕事と考えますと、建具屋は関東より関西の方が上かもしれません。

 いかにきれいな仕事をするか。
理屈に合った仕事をするか。
理屈を考えたことから、割ケヒキ自体が使われなくなってきています。
割ケヒキでは、材を割る時にどうしても木を殺してしまう。
つまり押しつぶしてしまう訳ですが、これが弱点になっています。
今日では電動鋸のよいものが出てきたために、割らずに電動でノコ挽いた方が材にとってよいこともあります。
ただし、なぜケヒキを使ったのかという理屈が残っている間は、ケヒキはまだ使い続けられることと思います。
それは、ケヒキが基本を押えるものであり、手仕事の手に一番近い道具であるからなのでしょう。 

      
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