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鋸(ノコギリ)

1.鋸の手入れ−目立て

 辞書によれば、
鋸(ノコギリ)とは <材木を切る道具.鍛えた鉄で偏平に薄く長方形に作り、側面に無数の細かい強靭な歯を刻んであるもの。手で使用するものと、機械的装置によって作用させる丸型、帯型のものがある>とあります。
 
 今日ではノコギリというと、一般には横挽き用、縦挽き用と、両方の刃のついた通称両刃ノコギリが代表しています。
しかし、ノコギリほど時代と共に大きく変身した道具はありません。

 木には木目というものがあります。
挽割る道具のガガリ

この木目に平行に切断するか、直角に切断するかは、ほとんど全くと言って良いくらいに別物です。
今日では木を切ると一口にいいますが、昔は木目に直角に切断することを挽切る(ひききる)、
平行に切断することを挽割る(ひきわる)と、違う言葉で言い表わしていました。
そして、挽切る道具をノコギリ、挽割る道具をガガリと呼んで区別していました。

 建具屋は建物に寸法を合わせて、縦横二丁のガガリとノコギリを使い分けなくてはなりませんでした。
今日では、片側にしか刃のついてないものを総称して片刃ノコギリといいますが、
建具屋の建てこみ仕事は縦横と数多く、交互に挽くので、ガガリとノコギリをその都度持ち替えなければなりませんでした。

両刃のこぎり
 左手は建具を押さえており、右手でガガリとノコギリを持ち換えるのは面倒です。
そこで、横挽きノコギリの背に縦挽き刃を切って使用するようになりました。
これが、現在の両刃ノコギリの最初だといわれています。
この時にできたノコギリは9寸ノコギリで、細工用のやや小ぶりのものでしたが、両刃ノコギリが便利だったので、その後、いろいろな大きさのノコギリがつくられるようになりました

 大正の初め頃、両刃ノコギリの普及も進み、片刃ものと半々くらいに使用されていたようです。
大正12年の関東大震災後の建築特需で、大工使いの両刃ノコギリが急激に普及したといわれています。

 古い時代には、横斜切用の刃型をした横挽きノコギリはありましたが、縦挽きノコギリつまりガガリなるものはありませんでした。
しかし、その横挽きノコギリも今日のノコギリとはずい分と違って、木の葉のような形をしていました。
今日では、それを木の葉ノコギリと呼んでいます。
では、縦、つまり木の繊維と平行に切断するのはどうしていたのでしょうか。

 縦に割るのは、ノミと言いますか、タガネのような道具を切断する箇所に次々と打ち込み、割りさいたのです。
このやり方だと、木の目に従って割れてしまいます。
ですから、よほど木目の通った素直なものでないと、上手く割れません。
古い建物を見ると、桧、杉、ヒバ、サワラ等が多く使用されているのは、こうした針葉樹系の木が割り易かったためでしょう。

現在の大鋸、渡来品は帯状で2人引だった
木挽きノコギリの刃を拡大
 室町時代に、大鋸(オオガ)と称される縦挽きノコギリが、大陸文化として日本に渡来してきます。
こうしたオオガによって、それまで割りにくかった広葉樹系の木材も使用することができるようになったわけです。
今もって、ノコギリの挽きくずをオガクズと呼んでいるのは、縦挽きノコギリが、工作上どんなに役に立ったかを物語っています。

 ノコギリを大別すると、荒物と呼はれます製材用のものと、細工に使用されるものに別れます。
荒物用のなかで、今日使用されなくなったものに手挽製材用ノコギリつまり木挽ノコギリがあります。
図のような形をした大きなノコギリです。電動の製材機の登場によって、この木挽ノコギリはほぼ絶滅しました。

 木挽ノコギリは製材用のため、ノコ板の厚みが2〜3ミリと厚くできていす。
また、他のノコギリと違って、ノコ板に焼き入れがしてありません。軟鉄のままです。
ノコ刃をヤスリで研磨してから、鍛治箸と呼はれるヤットコの先を加熱して、それでもって刃先だけを焼き入れします。
ですから、しばらく使ってくると、焼き入れした部分が研ぎ減ってなくなってしまいます。
すると、再び鍛冶屋によって刃先だけ焼き入れしなおして使用するのです。
かつては、街や村のあちこちに鍛治屋がいましたから、木挽ノコギリも焼き入れをくり返して使用できました。

 木挽ノコギリは、また刃の形も右図のように独特です。
チョンガケと呼ばれる二段構えの刃で、チョンガケ・ヤスリで小さなくぼみを付けます。
この刃で木を挽くと、オガクスはクルクルとまるまってでてきます。
そのグズの形は、ぜんまいの芽のような形をしていす。
これは木挽ノコギリが切断するというより、細い溝を削り下けていくような作業をしているからです。
もっともこのチョンガケは明治降に発明されましたもので、それ以前の木挽ノコギリにはチョンガケはありませんでした。
このチョンガケのおかげで、以前より軽くきれるようになりました。
 
 木造船を作る場合、竜骨などの曲がった木材が必要な時などは、木娩ノコギリの一種である小割鋸の独断場でした。
船大工は木挽小割鋸をくし型にした船型鋸で曲木を作ったのです。
木挽ノコギリは日立ての仕方しだいで右にも左にも、どのようにも曲げて挽割ることができます。
曲がった丸太の原木から、その木の曲がりなりに曲木を取ると木の繊維は連続していますから、曲がっていても丈夫な材がとれます。
木造船から鋼鉄船へ、人力から電動へ、このノコギリも見ることはありません。
 細工用ノコギリをはじめとして、今日の一般のノコギリはノコ板金部に焼き入れされています。
ノコギリ板は軟鉄ではなく、鋼つまりハガネです。
昔は薄い鉄板に焼き入れをするのは、大変な技術でした。
昔はドロ焼き入、砂焼き入という幼稚な製作方法で作られており、なかなか硬度の高い焼き入れができませんでした。
薄い鉄板に焼きを入れると、均一にならず、どうしても歪みがおきました。
江戸時代末に、福島県の会津で油焼き入法が発見され、硬度の高いノコギリができるようになりました。
同時に、強度も増し、前のものより薄くなり、精度の良いノコギリができるようになりました。
油焼き入法も、明治中頃には全国へと普及しています。

のこぎりの寸法
 ノコギリは、九寸とか尺とかノコ板の長さで、大きさを表わします。
しかし、尺ノコギリと申しましても、刃渡りは実際には一尺はありません。
それは左図のように材に刃を入れた時、余長を見て1尺と呼んでいるわけで、切る長さが1尺ばかり有効だというのです。
また、刃の数といいますか、刃の目数も決まっていす。
尺ノコギリは1寸あたり13枚目、9寸ノコギリは21枚目です。
9寸目の尺ノコギリという妙なノコギリもありましたが、今日では機械で大量生産するので、規格外れのものは見かけることが少なくなりました。

1.鋸の手入れ−目立て
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