ハードとしての確実な家作り : 実践編

32.空調設備工事    その1

 空調設備工事というのは、空気を相手にするもの全般をさします。
その中に、

1.暖房工事、2.冷房工事、3.換気工事、4.排気工事

があります。
空調は、正確には空気調和設備といいます。
これは室内の空気を相手に考えます。
当たり前ではないか、と言われるかもしれませんが、閉ざされた空間であることが空調の前提なのです。

 空気は、どんな狭いところでも通り抜けてしまいます。
また、気圧の差があると空気は移動します。
ですから、空気を密閉された環境においてやらないと、空調の前提が成立しません。
空気を包む箱を作るのは建築ですから、建築との連携プレイがうまくいかないと、空調の効率はひどく悪いものになってしまいます。
最悪のときは、いくら機械をまわしても、何も効かないことすらあります。


 今までは、空調といえば、機械を使って空気を温めたり、冷やしたりするものをさしました。
もちろん、これも空調の一種です。
しかし、建築と無関係、もしくは、建築設計が終わってから、空調設計をするのではなく、建築設計に空調設計を同時に取り込んで、建築全体として設計を進めていく考え方があります。
小さいものでは、サンルームや、南側にだす深いなどがそれです。
サンルームと空調の関係は想像してもらえると思いますが、庇と空調が関係あるのだろうかと疑問に思われるかもしれません。

 
夏と冬では太陽光の高さが違う

 左図を見てください。
Aは冬、Bは夏です。
寒い冬は暖かい太陽の光を、たくさん部屋の中に取り込みたいものです。
Aでは太陽の光が、部屋の奥まで届いています。
ところが、夏になると暑いですから、太陽の光は欲しくありません。
Bをみると、太陽の光はまったく部屋に入っていません。
夏の太陽は、高く上がりますので、この庇がさえぎってくれています。
もし、この庇がなかったら、どうなるでしょう。
冬は問題ありませんが、夏は点線のところまで太陽が入ってしまいます。


 これは、南の庇でした。
では、どの方角に付けても、同じかと言うと、そうではありません。
全ての方向の立証はしませんが、西側だけ考えてみます。
西から太陽があたるのは、夕方だけです。
西日を嫌うのは夏です。
夏の西日は、低い入射角で室内に入ってきますから、庇の下を通ってしまい庇ではまったく防げません。

 
夏の西日は低くて強い

 敷地の関係でどうしても、西向きにせざるを得ない建物があります。
たとえば店舗です。
西側に道路があると言った場合は、西日対策が不可欠です。
店舗の場合は、西向きだからといって、道路面を壁にしてしまうわけにはいきません。
そんなことをしたら、お客さんが入ってこなくなってしまいます。
お客はいれたい、西日は遮りたいという二律背反を解決せねばなりません。
そこで匠事務所では、左図のように壁をずっと下まで下ろして、普通の窓とは反対の位置に、採光のためのガラスブロックを積みました。

 こうしたことも、実は空調の一種です。
建築的な空調と、機械的な空調とでもいいましょうか。
この二つが一緒になって、快適な室内を作るのです。
しかし、建築的な空調は、立地などの条件によって大きく左右されますので、一般的には語られません。
しかも、建築的な空調は、定価商品を積み上げていくのではありませんから、目に見えて金額をはじくことができません。
今日のように、カタログから建築部品を選ぶ時代には、なかなか理解してもらえません。

 建築的な空調は、建築が存在するかぎりありますから、その働きが充分には理解されません。
そこにいくと、機械的な空調はスイッチを切れば効かなくなって、その働きを簡単に確かめることができます。
ですから、その有効性が理解されやすいのです。

 建築は、建物全体です。
これは、どんなに強調しても、強調し過ぎということは、ありません。
しかしながら、建築的な空間は、建築設計の中でしか述べることはできません。
ですから残念ですが、ここでも機械的な空調についてだけ述べていきます。

 空調の話にはいる前に、全館空調か、各部屋の個別空調か、という問題を考えておきます。
匠事務所では、住宅においては原則として、全館空調という考えをとりません。
もちろん全館空調が快適であることは、誰でも知っています。
しかし、全館空調で快適に暮らすためには、大変なお金がかかるものであることも、また知っています。
その快適さと、維持費を秤にかけると、ほどほどの快適さでいい、というのが匠事務所の方針です。
ですから、これから述べるのは、すべて一部屋単位の空調についです。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい