ハードとしての確実な家作り : 実践編

22.断熱工事

 室内の壁と屋外の壁の分離が、大発明だと言いましたが、このおかげで可能になった工事があります。
それは断熱工事です。
内外の壁が一体化していると、その間には何も入れることができません。
壁自体の断熱性能が、そのまま家の断熱性能になってしまいます。
内外壁の分離により、その間に断熱材を入れて、壁の断熱性能を高める工夫がなされるようになりました。


 断熱性能は、壁だけを問題にしてもあまり意味はありません。
断熱とは家から熱が逃げるのを防ぐことですから、家のどの部分から熱が逃げるかを押さえておく必要があります。
1.窓、2.壁、3.天井、4.床が、部屋を取り囲んでいますが、もっとも熱の逃げやすいのは1.窓です。
カーテンを閉めると、部屋が暖かいように、窓の断熱をまず考えるべきです。
それが最も簡単に断熱性能を上げる方法です。

 窓の断熱の話に行く前に、窓をつける場所の検討が必要でしょう。
北側に大きな窓をつければ、どうしても冬は不利ですし、西側に窓をつければ夏には不利です。
かといって北側につけないと、通風が取れませんから、南の窓は大きく、北の窓は小さくと言うのが原則でしょうか。
西の窓は、熱的には良いことは何もありませんから、西側に窓を設置せずに済めばそれに越したことはありません。
窓の位置の検討は、設計段階でするものですから、本論ではそれは終わったものとして話を進めます。


 窓の断熱は、断熱サッシと呼ばれるものを使うこと、2重サッシにする方法があります。
関東地方では2重サッシにするより、断熱サッシを使うほうが多いようです。
というのは、2重サッシは開け閉めが不便ですから、断熱性能は少し落ちても、断熱サッシを選ぶことになるようです。
2重サッシは、普通のサッシを2枚建て込むことですから、断熱性能も2倍になりますが、工賃も2倍材料費も2倍です。


 断熱サッシは、ペアーガラスという2枚ガラスが入っており、金属部にも断熱材が裏打ちされています。
そのため、1重のサッシと同じ使い勝手でありながら、2倍近い断熱性能があります。
値段も1.5倍くらいですから、寒さがそれほど厳しくない関東地方以南では便利な製品です。
ペアーガラスの内側に金属の膜を塗ったLaw−E ガラスを使うと、なお断熱性能があります。
しかし、断熱サッシは最近の製品ですから、あまり種類が多くなく、大きさが限られています。
また、ガラスが特殊なため、切りつめなどの加工が高価になります。
そうは言っても、断熱による冷暖房の低減は、家の維持費の低減となってきますから、断熱サッシはたくさん使われるようになりました。

 新築の住宅では、断熱サッシを使い、外には雨戸、室内には障子を建て込めば、相当高い断熱性能が実現できます。
これが定番の仕様でしょう。
これ以上断熱性能を上げるためには、見返りの断熱性能に対して投資金額が膨大になり、関東地方ではあまり現実的な話ではありません。


 壁の断熱です。
室内は石膏ボードクロス仕上げ、外壁モルタル塗りでは、熱は簡単に逃げていきます。
そこで、壁の中に断熱材を入れるようになりましたが、この工事は最近生まれたものであるため、おざなりにされているようです。

通常はグラスウールというふかふかした断熱材を入れるのですが、隙間なく入れなければならないにもかかわらず、きちんと入ってない例が多いようです。
匠事務所では、グラスウールを使わず、スタイロ フォームを使っています。


 グラスウールは柱の厚さを利用して外壁と内壁の間に入れるのですが、スタイロフォームはボードですので間には入りません。
そこで、まず柱の外側にラワン合板(=コンパネ)をはり、それにスタイロフォームを張り付けます。
匠事務所が使っているのは、50ミリのスタイロフォームです。
その上に透湿シートを張り、その上から外壁下地となるものを、長い釘でスタイロフォームを貫通して固定します。


 柱の面から見ると、コンパネ(12ミリ)+スタイロフォーム(50ミリ)+透湿シート(0.2ミリ)+壁下地(15ミリ)+外壁(約15ミリ)となります。
これは強力な断熱壁ですが、厚さが12+50+0.2+15+15=92.2となり、サッシの厚みである70ミリを越えてしまいます。
そこで、サッシを取り付けるときに、窓まわりにあらかじめ 40ミリ程度のふかし材を打ち付けておきます。
そうしないと、窓廻りがおさまりません。


 天井にも断熱材を入れますが、最上階だけです。
上にもう1階あれば、遮音材は入れたほうが良いでしょうが、断熱材は入れる必要はありません。
屋根面の断熱は重要です。
壁の時と同じ方式で、垂木(たるき)の上にスタイロフォームを並べ、その上から長い釘でコンパネを固定します。
もしくは、垂木のあいだにスタイロフォームを落とし込みますが、これはきちっと入れるのが難しく、もし透いてしまったら発泡性の断熱材を吹き付けてふさぎます。

 屋根裏の断熱は施工が難しいのですが、必ずやっておきます。
でないと、せっかく高価な断熱サッシを使った意味がありません。
そして、忘れてならないのが、小屋裏つまり天井上の換気です。
夏は断熱をしても、小屋裏には熱がこもりますので、換気扇などを使って積極的に小屋裏の熱気を逃がしてやります。
冬でも小屋裏は暖かいものです。
その熱を逃がす手はありません。
そこで、小屋裏の熱を床下へとダクト引きして、1階の床を暖めるのに使います。


 床の断熱は、蓄熱層を作った場合は、蓄熱層と地面の間で、蓄熱層を作らなければ床面でします。
床は人が歩きますから、根太の上にスタイロフォームを敷くことはしません。
根太と根太のあいだに断熱材を落とし込み、床材は根太に直接固定します。
この場合も、隙間は発泡性の断熱材できちんとふさぐべきです。


 断熱と言うことは、部分で考えるのではなく、家全体で考えるべきです。
簡単に言えば、室内を断熱材ですっぽりとくるむことです。
この時に、すべての部位で同じ断熱性能が出るように調整すべきでしょう。
隙間をつぶし、魔法瓶のような室内を作ると考えて下さい。
断熱性能が上がってくると、空気の流通が悪くなりますから、必ず換気設備を設けなくてはいけません。
それを怠ると、室内に空気がよどみ、カビがはえたりします。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい