ハードとしての確実な家作り : 実践編

21.鉄骨工事

 最近では、木造住宅と家でも、鉄骨を使うようになりました。
(かすがい)などのような金物は、昔から使っていました。
しかし、大きな鉄の部材である鉄骨が持ち込まれたのは、そんなに古いことではありません。
木造住宅が鉄を嫌ったのは、家全体の柔軟性が、鉄という異質なものによって狂わされて、強い鉄と接する部分の木が負けてしまうからです。

 二階建ての建物が多くなり、特に一階を店舗として使うものは、一階の真ん中に柱をたてることができません。
一階に柱をたてないためには、二階の床下つまり一階の天井裏に、背の高いを渡さなければ、二階の荷重を支えられません。
木の梁を使う場合、通常は、飛んだ距離(これをスパンという)の10分の1〜12分の1の梁背の部材を使います。
たとえば、2間(3.64メートル)飛べば、その10分の1つまり 360ミリの梁を使います。

 飛ぶ距離がだんだんと遠くなってくると、梁の背の高さが、それに比例して大きくなっていきます。
ところが、梁背を高くすることは、(ふところ、一階の天井と二階の床のあいだ)が大きくなることを意味し、無駄な空間が増えることにつながります。
同時に階段の長さが長くなることにつながり、ひいては建物全体の高さを押し上げ、使えない空間のために建築費が高くなります。


 梁背を抑えることは、建築コストを抑える上でも、使い勝手からも要求されるところでした。
鉄の梁は、木の梁の50〜60%の大きさがあれば充分です。
そのため、こうした長スパンの建物には木の梁に代わって、鉄の梁が使われるようになってきました。
断面が
型をした鉄骨が使われることもありますが、通常はコの字型した鉄骨を、二本背中合わせにして使います。

 合せ梁は、木の柱とのなじみがよいのです。
木の柱を両側からはさむため、鉄の梁をボルトでつなぐことができます。
そのうえ、そのあいだには木の束をいれて、その他の部材との結合にも役立てることができます。
つまり、鉄と木ではなく、鉄骨を使いながら木と木の接合にできるのです。
型や他の断面をした鉄骨では、こうはいきません。

 鉄骨の梁を使った場合は、胴差上端(うわば)を同じ高さにすることはできません。
こうした例では、一階の天井高を高くしたいことが多いため、鉄骨の梁が胴差の上になって、二階の柱の根元を、はさむように使うようです。
こうすれば、鉄骨の下端=一階の天井となりますので、天井が高くとれます。


 木造の建物の中に、鉄骨を使いたくはありませんが、木では不可能なところでは、鉄を使うことを拒否する理由もありません。
要は、材料の特性をうまく生かして、いかに使うかに尽きるのでしょう。
誰が考え出したかわかりませんが、この鉄骨の使い方には感心させられます。

 他にも、鉄骨が使われることがなくはありませんが、きわめて例外ですので、省略します。
しかし、鉄骨と呼べるような太い部材ではなく、鉄の板や細いパイプというような形では、他にも鉄は使われます。
それをここでまとめておきます。


 前述のとおり、鉄は木よりも細くできますから、細くみせたいときには、鉄の使用が考えられます。
とりわけ、鉄は溶接という接合ができるため、接合部が小さくなり、全体を小さくみせることができます。
たとえば階段でも、きわめて軽快にみせたいときには、鉄が登場します。

 木工事その7で述べた以外にも、階段はあります。
たとえば、小さな部材だけで構成した階段は、見た目に軽い印象を与え、狭いところには適しています。
また、螺旋階段も鉄以外では作れません。

 外部階段も、コンクリートが使えなければ鉄になるでしょう。
鉄を外部に使うときは、常に錆の問題があるのですが、木の階段は腐ってしまいますから木の階段は論外です。
今のところ常識的には、鉄の階段に塗装を繰り返しながら、使うこと以外にはないでしょう。
これは屋根を金属で葺くのと、まったく同じ話です。


 階段といえば、手摺りなども鉄で作られることがあります。
ふつう、手すりといったときは、アルミ製をさすことが多く、それは雑工事で述べますが、鉄製の手すりもあります。
アルミ製の手すりは、完成した既成品として売られているのに対して、鉄製の手すりは、どんな形にでも作れる鉄の特性を生かして使われます。
ですから、うまく適合するアルミ製の手すりがないときに、作られるわけです。

 また、ベランダも今ではアルミ製のものがあって、かなり自由に作られています。
しかし、ついしばらく前までは、アルミの成型が自由にならなかったので、ほとんどが鉄製でした。
今でも、少し変わったベランダを作ろうとすると、アルミでは対応できず、鉄製ということになります。
鉄は、部材としての定尺はあるものの、切断や溶接が自由になるため、どんな形にも作ることができます。


 何度も言うように、鉄は錆びますから、外部に使うときは、必ず塗装せねばなりません。
ふつう、鉄の塗装は鉄の地肌に、まず錆止めを塗ります。
これにもいろいろあって、すぐ乾く錆止め塗料もあります。
しかし、塗装工事のところでも述べたように、錆止めは鉛丹です。
鉄の地肌に、鉛丹という塗料を塗るのですが、錆止めは鉄鋼所で塗られてきます。
ですから、よほど事前に注文しておかないと、現場に搬入されたときは、すでに他の錆止め塗料が塗られている仕儀に陥ります。

 錆止め塗料はすでに塗られたものとして、次に話を進めると、ここで着色ということになります。
再塗装の際には、錆止めまで塗り替えることはなく、錆止めの効きがまだ生きている状態で再塗装されます。
ですから再塗装は、着色のためのペンキ塗りということになります。


 鉄を使ったものは、屋外にはたくさんあります。
本当はこれらの小さなものにも、再塗装すべきなのでしょうが、なかなか目が行きとどきません。
小さな鉄製品は、壊れたら取り替えるとしても、階段や手すりはそうはいきませんから、まめに塗装することです。
木造住宅の中では、鉄を使うのは本当に少ない部分です。
しかし、現代的な建築は、ますます複雑な要素が入り込んでくるので、鉄の利用は増えてくるでしょう。 


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「タクミ ホームズ」も参照下さい