ハードとしての確実な家作り : 実践編

20.畳工事   その1

 今日、の部屋は、どんどん減っています。
新築される家を見ていますと、30坪くらいの家でも、畳の部屋は一部屋あるかないかです。
それも、主なる部屋に畳が使用されているのではありません。
予備室などという名前をつけられて、片隅に作られる部屋に、畳は使用されている例が多いようです。

 素足のための床仕上げ材として、畳は出色ものです。
これだけ優秀な建築部品を発明した民族はいない、と断言しても良いくらいに畳は優れたものです。
畳の使用が減ることは、本当に寂しいかぎりです。

 総工事費にしめる畳の割合が減ってきたため、今日では見積書に畳工事という独立項目は、なくなってしまいました。
今日では畳の項目は、たいてい内装工事の最後にあげられています。
たしかに、それも仕方ないことかも知れません。
と言うのは、一畳が10、000円としても、六畳の一部屋にしか畳がなければ、全部でも 60、000円にしかなりません。
総工事費が1千万円以上する中での、60、000円です。
1%にも満たないのですから、もう無視されても仕方ない金額です。
この金額では、独立項目になり得ません。


 畳の意義については、<考える家>でかなり詳細に論じましたので、ここでは技術的な話にかぎって述べます。
まず、畳を敷きこむ下地についてです。
荒床といって、松や杉の板が張られた昔とは違って、今日では荒床もラワン合板を使用しています。
ですから、施工精度も上がり、床下から隙間風が上がって来ることも少なくなりました。
しかし、荒床と壁との取り合い部には、まだまだ問題があるようです。

 
風の通り道

 荒床と壁との間には、畳寄せという部材をいれて、壁と畳を見切ります。
この畳寄せと荒床との間に、隙間があいていることが多いようです。
この隙間は、そのまま床下まで続いていますから、すきま風の通り道になっています。
完全に密閉してしまうのは、通気を止めてしまうので、畳のためには歓迎できないのですが、このままでは人間には少しつらいところです。
畳寄せとの間に、新聞紙をつめておくのは、隙間風を防ぐうえで、よい方法だと思います。
なんだか原始的な方法だと思われるかも知れませんが、完全に密閉しないという意味で、新聞紙を使うのは、なかなかよい方法です。


 畳は機械でつくられるようになって、性能が上がって、しかも丈夫になってきています。
畳は、三つの部品からできています。
芯となる床(トコ)、それをくるむ表(オモテ)、それに縁(ヘリ)です。
床と表の組み合わせは、何通りかありますが、高価な畳は、当然のことながら床も表も高価です。
安いものは 8、000円くらいから、上は 50、000円くらいまであります。

 床は堅く重いものを上物とします。
大量のワラを6センチの厚さに圧縮しているのが床ですから、より大量のワラを使用しているものほど堅く重くなっていきます。
ですから、大量のワラを使用しているものほど、高級品ということになります。
京間(畳)は、5.5センチの厚さですが、この原理はまったく同じです。
ふつう畳の厚さの約 8倍のワラを、圧縮形成します。

 高価なものになると、畳の角をきちんと出すため四隅に板をいれたりします。
こうなると、機械にはかかりませんから、手縫いになってしまいます。
かつては、すべて手縫いでしたから、ピンキリの差がたいへん大きかったのですが、機械縫いの床になってからは、安物でも性能が上がっています。
ですから、よほどのことがない限り、板入れの床はつくらなくなりました。


 最近では、減反政策によって畳の材料になるワラが不足してきました。
また、間違った使い方によってですが、畳にはダニがわいたりしてきました。
そこで、床材はワラだけではなく、木質系のボードや発泡スチロールなども使うようになってきました。
新素材を使った床は堅さが直接的で、いささか奥行きに欠けますが、日常に使うなら何等問題はありません。
新素材を使った床でも、以前の床より優れてさえいます。
床の平均点が向上したことは、畳全体の性能向上につながっています。

 藺草(いぐさ)を横糸、綿もしくは麻糸を縦糸として織ったものが畳表で、これにも、いろいろと種類があります。
床の間などに使用される琉備(りゅうびん)表、丈夫さが売り物の琉球(りゅうきゅう)表、最も普及している備後(びんご)表、といったところでしょうか。
その中でも最近では、表といえば備後表だけ、といっても良いくらいになってしまいました。
備後表とは名前の通り、備後地方、いまの広島県でつくられた表をいいます。
それが有名だったので、同じようにしてつくられる表は、熊本など他の地方でつくられても備後と呼んでいます。
最近では、中国や韓国などからも輸入されています。
殿様商売をしている広島にたいして、最近では熊本のほうが畳の普及に熱心です。


 畳の目数などと言う言葉も、だんだん死語になりつつありますが、当然のこととして、目数の多いものを上物とします。
イグサは芯が空洞なため、弾力があり、断熱性や保温性に優れています。
畳表は裏返してもう一度使えます。
ただし、イグサの表面がささくれだってくるまで使ってしまうと、裏返しては使えません。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい