ハードとしての確実な家作り : 実践編

17.石工事   その1

 石というと、建築に使用するよりも、彫刻や庭に使うものを、想像されるかも知れません。
けれども昔から、建築の世界でも石をさまざまな形で使ってきました。
古くはお寺などの柱の根元にすえられた石のように、家の荷重をすべて背負っていたのが石でした。
また、玄関や風呂場などには、化粧材として石をはっています。
前者が塊としての石とすると、後者は板状の石ということができます。

 元来、ヨーロッパで石造りの建築というと石を塊に彫りだして積みあげていったものです。
そして、アーチやドームなどで空間を作りました。
しかし、日本では地震が多いせいもあって、そうした石の使用のされかたはありませんでした。
ただし、地震が多発した地方でも石の建築は作られているので、日本に石の建築がなかったことは、地震だけのせいではないとは思いますが。

 鉄筋コンクリート造の普及にともなって、壁面に薄い石をはりつけるような工法が定着しました。
大体25〜30ミリほどの厚さに切った石を、いろいろな工法で建物にはりつけたわけです。
街中には重厚な外観を持つ、豪華そうなビルがたくさんたっていますが、あれ等がそうした例です。

 木造住宅では、外壁に石をはることはまれです。
木の外壁に重い石をはるのは不可能ですから、石は必然的に床に使用されます。
塊としての石、板としての石といいましたが、今日では塊としての石の使用頻度は減ってきました。
それは、石が高価なため、それに替わるものが発明されたからです。
最も安い石の代替え品、それはコンクリートです。
鋳型でぬいたコンクリート製品は、安価でしかも、形が自由にできるため、外観を問わない部分には石に替わって使用されます。


 今まで述べてたのは、切り石と称される加工石ですが、石には、もう一つの顔があります。
それは野面(のずら)と呼ばれる自然石の形で使用する場合です。
これはもっぱら和風建築で見られ、茶室の柱の根もとの沓石や、玄関の靴脱ぎ石などがあります。
また、自然石でも板状をした石もあり、床に使用されたり、腰壁に貼られたりしています。
この自然石の施工は、庭園工事と重なっている部分がかなりあり、同じ石屋でも切り石をあつかう職人とは、また別の人が行っています。

 切り石から説明していきましょう。
切り石はもともと大きな石の山を、少しずつ切りだしてくるものです。
かつては、山奥深い石切り場から人力で運びだしていたので、あまり大きな石は流通していませんでした。
人が背負ってくるのに適当な大きさ、それが五十(ゴトーと読み、5寸×1尺つまり150×300×900ミリ)や六十(ロクトー、180×300×900ミリ)といった定型品となりました。

 今日では、建築で切り石というと、圧倒的に板状の石をはる工事が多く、塊のままの石を使用するのは、むしろ、墓石などの建築以外のほうが多いようです。
ですから、ここでは、貼石工事を中心に話をすすめていきます。
石は重い(比重が2.5〜3くらい)ので、どんな種類の石をはるにしても、下地がしっかりとしていないと施工不可能です。


 木下地の壁では無理で、コンクリートもしくはブロックの下地になります。
一般の住宅で、石が使用される部分は、次に述べるタイルとよく似ています。
門から玄関まわり、浴室、そして洋間の暖炉のまわりと言ったところでしょう。
そうした所には、適材適所という具合に適合する石があります。
そして、石は材種により、また表面の仕上げ方法により、全く異なった表情をみせます。
ですから、ねらった雰囲気にまとめ上げるべく、慎重に選ぶ必要があります。


 一般の建築案内書はここまでいって、大理石とか御影石とかと、石の種類の説明に入ってしまうのが普通です。
しかし、石の種類から入るのは少し考えものです。
というのは、石は他の材料たとえば木などとくらべると、その表情にはとても広い幅があるのです。
同じ種類の石でも、表面仕上げの方法によっては、別のものにすら感じます。

 匠事務所では、どんな雰囲気の家を作るかを大切に考えています。
ですから、素材から出発するのではなく、まず、作る意志=設計のねらいから出発するべきだと思っています。
洋風とか和風とかだけではなく、上品な感じとか、硬質な感じとか、荒々しい感じとか、素朴な感じといった、ねらった雰囲気をまず語るべきでしょう。
石は高価だから、高級住宅には石を使用するといった発想で石を使用すると、高級感どころか成金趣味になります。


 高価な石の表情を楽しむのですから、色、模様、質感、表面仕上げ等などの具合が、すこぶる重大になってきます。
それぞれの石の特性を、建物の雰囲気にあわせるには、とここまで書いてきて、大きな壁にぶつかっています。
石は材種によっても、仕上げによっても、非常に違って見えます。
そうした違いを文字で伝えるのは困難なのです。
形は図を描けば伝わりますが、質感はなかなか伝わりません。
例えば、代表的な石材である白い御影石ですら、ゴマ塩の程度はまちまちで、産地によっても異なり、文字による伝達は困難です。
紙上で、石をどう伝えるか本当に困っています。
そうは言っても仕方ありませんから、手さぐりですすむことにしましょう。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい