ハードとしての確実な家作り : 実践編

15.板金工事  その1

 屋根工事のところにも、板金工事がありました。
屋根工事は部位別の分類で、工種別の分類ではありません。
本来は、どちらかに統一すべきなのでしょうが、それがなかなか難しいのです。
ここでは、板金屋が行う工事でも、屋根工事以外の板金工事を述べます。

 板金工事としてまず目につくのは、工事です。
屋根(ひさし)の流れ尻についている半円形のあれです。
最近では、板金工事とは言いながら、樋は金物ではなくプラスチックになっていますが、今までの習慣で板金屋があつかっています。

もちろん、お寺や高級住宅では、銅板を使用することもありますが、それも減ってきました。
銅板を現場加工して樋を作らせるのは、困難な仕事になってきます。
(既製品の銅製樋もある)
そして、亜鉛鉄板を現場加工して、樋を作ることは絶えてなくなりました。
匠事務所でも、一般住宅ではプラスチック製の樋を使用している昨今です。

 プラスチック製の樋には欠点がありません。
錆びないし、安価だし、加工は簡単だし、まったく良いことずくめです。
プラスチックの欠点とされる貧弱な質感については、樋のつく位置を思いだせば、なんら気にならないことに気づかれるでしょう。
地上から4〜7メートルもはなれた、手のととどかない遠くに付くのですから、色が識別される程度で、質感まではとても判らないのです。
プラスチックの樋は、工場でそれらしい色に加工されてきますから、現場塗装の必要はありません。


 しばしば古いものに懐古の情を示す匠事務所も、樋についてだけは、プラスチックに無条件で賛成します。
多くの場合、プラスチックは何かのまがい品として作られますが、樋については、亜鉛メッキ鉄板の代替品として考えることは間違いです。
プラスチックの特性が、樋という用途にピッタリと適合したのであって、むしろ、亜鉛メッキ鉄板こそプラスチック製の樋が登場するまでの、つなぎ役だったと言っても過言ではありません。

 
樋の部分

 樋は、横引部分=軒樋と、縦引部分=縦樋からできています。
そして、軒樋と縦樋の接合部を鮟鱇(あんこう)と呼んでいます。
アンコウのつるし切りと言うあの姿と、似ているところからでた名前だそうです。
軒樋は半円形が良く使用され、半径105〜150までが常備品であります。
大きな屋根には流水量が多いので、大きい樋をつけるのは言うまでもありません。
半円形でのみきれない時は、同じ巾でも流量の多い角樋とします。


 縦樋も多くは丸型で直径60ミリが標準で、120ミリまであります。
縦樋にも角物もありますが、角樋は少々ゴツイ感じがします。
ただし値段は角樋の方が高く、高級品と呼ばれています。
値段は、105の半丸の軒樋、60の丸の縦樋で、共に材工ともで¥2、000〜2、500/mくらいでしょう。
最近では、ガルバリウム鋼板製の樋もありますが、ちょっと高価です。

 樋は、つける場所によって、二つの考え方があります。
まず、本当に雨をとるだけならば、これ以降に述べるように、がっちりと大きな樋をつけます。
しかし、玄関先のように、そのすぐ下を人がとおり、その樋が良く見える場合は例外です。
つまり、樋をつける目的が違うのです。
玄関先などにつく樋は、大雨の時ではなしに、小雨の時に役立つように設けます。


 大雨のときは誰でも雨に濡れることを嫌って、慎重に傘をさします。
この時は、誰も樋をあてにしてはいません。
しかし、小雨の時は、必ずしも傘をさすとは限りません。
このとき軒先から滴がたれないように、樋をかけるのです。
だから玄関先などには、小さな樋でかまいません。
また、この時は樋は水平にかけるほうがいいでしょう。
というのは、樋は水平につけても、水の量が多くなれば自然と流れるからです。
しかも、水平な屋根庇の先端に、水勾配がついた樋をつけることは、水平線が崩れて軒先が見苦しくなってしまいます。

 軒先につける軒樋の固定方法には、二通りあります。
面付けと打ちこみですが、これは打ちこみをすすめます。
匠事務所では、特別の事情がない限り、打ちこみを標準仕様としています。
面付けはどうしても下がりやすく、また水平をとるのも難しいようです。

 雨水が流れるだけだから、樋が下がるなんてことはない、と思うかも知れませんが、冬の雪でやられてしまいます。
屋根に雪止めがついていればまだしも、ついていなければ、雪の重さは全て樋にかかってしまいます。
雪がとけるまでそのままですから、大ていの樋は下がってしまうわけです。


 雪にも敗けない樋のつくり方はありません。
樋をもっと丈夫な箱にして、屋根や軒先と一体化してしまう方法もありはしますが、匠事務所はすすめません。
箱樋とか内樋と呼ばれるこの方式にしたから、手入不用かと言うと、そんなことはありません。
また内樋にしたから、建て主は手入れをマメにするかと言うと、残念ながらそんなこともありません。
すると屋根と一体化しているため、樋が痛んだ時は屋根も痛んでいて、気づいたときは大修理という次第です。
もちろん設計者としては、軒先の線がくずれる樋なんぞ隠したいところですが、何とか樋自体で美しくみせる工夫をすべきでしょう。
そして、樋は定期点検によって維持すべき部分と考える方が良いようです。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい