ハードとしての確実な家作り : 実践編

13.木製建具工事   その1

 建具は、その動き方から分けると、引き戸開き戸に大別されます。
また、構造上から分けると、板戸、障子と三種類になります。
それぞれの場所に引き戸か開き戸の、どちらかを建て込むかは設計の話ですから、ここでは省略します。
本論では、建具の構造を中心に話をすすめていきます。

 西洋で建具と言った場合、ふつうは建具を開閉させるための、まわりの枠共での話が多いのです。
しかし、造作工事のところでも述べたたように、日本では、建具を走らせる内法(うちのり)つまり鴨居敷居は、大工の工事領域です。
開き戸でも事情は全く同じです。
(最近では枠ごと工場製作された建具もあり、普及し始めている)

 建具工事は、二種類の職方に分かれています。
つまり、建具を作る職人と、それを吊り込む職人です。

 建具は、現場からとってきた寸法にもとずいて、建具屋の仕事場で作られます。
最近では、かなりの部分が機械による加工となっており、既成品もあります。
仕事場では、正確な長方形になるよう、精密な工作がなされています。
建具を作るには、細かい神経が要求されるため、几帳面な性格が要求されます。
それにたいして、吊りこみ仕事には応用性が求められます。
というのは、どんな建物でも多少は狂っていますから、そうした中へ臨機応変に、削りつけて建てこむわけですから。

 
12ミリの部分を、<シマ>と呼ぶ

 建具と言って、代表は障子でしょう。
床から鴨居まで、いっぱいに開閉する<掃き出し>障子の場合です。
高さは 5尺8寸(176センチ)を標準とします。
溝の巾は7分(21ミリ)です。
そして、溝と溝の中間を(しま)と呼びますが、ここが 4分(12ミリ)で、関東ではこの寸法を標準とします。
そこを1寸(30ミリ)の厚さの障子が走ります。
すると、障子と障子の間には、1分(3ミリ)のすき間があく勘定になっています。


 1寸の厚さの障子と言いましたが、建具の材料は厚さ1寸1分(33ミリ)で流通しています。
それを削って仕上げると1寸になるわけです。
実に合理的な物流の体系が、1寸厚の障子を支えていると言えます。
ちなみに流通している建具材の規格寸法は、33、36(ラワンは収縮が大きいので、ラワンに限り34、37)40、45、50、60です。
これ等は建具のデザイン上、知っておくと良い数字です。


 3ミリの間隔と言いましたが、高さ176センチの3ミリです。
障子は引き違いが多く、2枚で一組ですから、片方だけ考えれば1.5ミリです。
この数字の意味するところは、障子は1.5ミリ狂ってはいけない。
これ以上狂うと、障子と障子がこすれて、動かなくなるということです。
実に微妙なものだと思われるでしょう。
こうした狂いを防止するために、建具用の材料は充分乾燥した、素性の良いものを使用します。
それが、前述の定尺寸法の建具材となって流通しています。
こうした配慮にもとづいて制作しても、建具は狂いやすいものです。
ですから、新築後半年から一年ほど経ったら、再調整が必要かも知れません。

 1寸厚という標準寸法は、俗に<はき出し>と呼ばれる高さ176センチの障子には、ちょうど良いのですが、小さな障子ではゴツすぎます。
高さ 90センチから120センチくらいの障子では、21ミリの溝、9ミリのシマ、そこを 8分厚(24ミリ)の厚さの障子を走らせることになります。
ところがこれだと、建具と建具の間隔が、6ミリもあいてしまいます。
そこで、閉じた時に重なる框の紙のはってない方を、27ミリの厚さにします。
すると、標準寸法と同じになり、上手に納まるわけです。

 
左の表が仕様、真ん中下(A)が姿図、上(B)が縦断面、右(C)が横断面



























 ここで、障子の部分の名称を掲げておきます。
横材は上から順に上桟、中桟、下桟です。
中桟がなかったり、二本あったりもします。
縦桟は框(かまち)と呼んでいますが、左右の別称はありません。
そして、中へ入る細い棒は、細桟ではなく、縦でも横でも組子です。
桟や框に組子がついた場合は、付け子と呼びます。
そして、下の方に板を入れると腰板となります。
柱にあたる部分は、大手(おおで)と呼びます。

 上図が匠事務所の標準的な建具図です。
Aが姿図(裏表で形が異なる時は、両面の図が描かれる)、Bがそれを横に切った断面図、Cが縦に切った断面図です。

 障子の上桟は、台形断面(建具屋は長押状という)をしていることがあります。
もしこれが、図のCのように長方形断面をしていると、鴨居に入れるためには、框だけではなく、上桟も図のように加工しなければなりません。
ところが、台形面であると、框だけ切り欠けば、鴨居に入れることができます。
その上、障子と鴨居が、框の二点だけ接しているため、軽く動かすことができます。
本来は、溝巾に納まるように細い長方形断面にすれば、問題はなかったのですが、それでは付け子や上桟の面などの関係で、7分(21ミリ)の溝におさまらず、苦肉の策で台形断面にしたのだとは、粕谷さんという建具屋さんから教えていただきました。

 框や中桟、下桟は、長方形断面です。
その寸法はそれぞれ少しずつ違いますから、1寸1分(33ミリ)の厚さの材料から切り出します。
流通している建具材を割りさけば、見付き方向(部屋の方から見える方向)には、平行な柾目が表れてきます。
見付けを柾目にとることは、建具の木取りの基本で、これによって狂いにくい建具ができます。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい