ハードとしての確実な家作り : 実践編

11.木工事   その13

 木工事も、その12までは、主として構造にかかわる部分でした。
どんな家でも、構造はそんなにバリエーションがあるわけではありません。
ところが、仕上げとなると、少し話が違います。


 今日では、敷きの和室と化粧床の部屋、つまり洋間とどっちが多いかといえば、圧倒的に洋間の方が多いようです。
和室と洋間では、木工事が相当に異なります。
ですから、これ以降は、和室と洋間に分けて、述べていくことにします。


 まず、畳敷きの和室です。
和室の原則は、柱が室内に見えることです。
そして、この柱を中心として、和室の造作は成り立っています。
すべての材が柱に取り付いていきます。
鴨居長押廻り縁天井という順に、部材を取り付けていきます。
そして、最後が敷居畳寄せです。
建具が入らずに壁になるところの鴨居は、付け鴨居と呼び、同じように敷居に相当するものは畳寄せといいます。
敷居は、他の工事者がつまずいて傷つけるのをさけるため、最後に取り付けますが、鴨居と対になって建具を受けるため、ここではまず、敷居と鴨居を述べます。

 
柱と鴨居・敷居の関係

 木工事その3でも述べたとおり、鴨居、敷居ともに、柱の面内に入ります。
つまり、敷居、鴨居はともに、柱の幅より狭いと言うことです。
ところが、たいがいどちらかには畳が入るため、敷居は鴨居より幾らか幅が広く、左図のような関係になります。

 以上の理由によって、敷居や鴨居の幅は、柱の太さによって決定され、105の柱だと100くらい、120の柱だと115くらいということになります。
構造材にくらべると、造作材の単価は高く、120の柱を使うと、たんに柱の値段の違いだけではなく、造作材へもはねっかえってきます。
ですから、太い柱の建築は、お金がかかることになります。

 幅はそれで決まるとして、厚さはどうなのでしょう。
造作材の加工は、下拵えと呼びますが、木工事その3で述べていますので省略します。
ここでは、すでに下ごしらえの終わった材を、柱に取り付ける方法を述べます。

 今日多く用いられているのは、鴨居のはじを鋸できっただけで、柱にどんづけにする源造(げんぞう)とよばれる方法です。
そして、固定は釘でします。
そのとき、鴨居の切口は真平ではなく、少しえぐっておきます。
(少しえぐった切断は、だけでできる。)
そうすると、柱と取り合う部分が、ピッタリとついてすくことがありません。
もちろん、鴨居の切断面のどの部分が柱につこうとも、鴨居としての用途には、何の支障もありません。
しかし、切断面の中心部がついてしまうと、外から見える周辺部は、すいてしまいます。
すいてもなんの支障もありませんが、鴨居と柱がすいているのは格好悪いもので、ここ(胴付きと呼ぶ)をぴったりとつけるのは、大工の腕の見せどころです。

 ぶつきりどんつけの仕口をゲンゾウとよび、つまるところ釘だけで固定されています。
ですから、これは安仕事の代表みたいに言われています。
しかし、本来ゲンゾウ仕事は、用材に高い精度を要求されるため、難しいものです。
それに対して、もう少し丁寧な仕口を追入れ(おおいれ)と呼びますが、最近では少なくなりました。

 
大入れの施工

 大入れは、自称名人クラスでは、圧倒的に上仕事とされています。
それは、釘に頼らず、木と木だけを組み合わせて、固定できる細工のせいでしょう。

 まず、鴨居のどちらかの端を約 1センチの厚さにきり、それを片方の柱におしあて、鉛筆か白罫き(刃の短い小刀のようなもので、正確な仕事をするときに使う道具)で形を移します。
そして、その印の 15ミリほど内側に図のような印をつけ、それに従って柱に掘り込みをいれます。
ここの深さは6〜7ミリです。

 反対側の柱にも同様に凹型の堀込みをつくります。
こちらは2〜3ミリと半分くらいの深さにします。

 そこに取り付ける鴨居の長さを、柱間より6〜7ミリばかり長く切断して、両端に凹型の加工をして、柱間に当てがいます。
柱間より長いのですから、このままでは入りません。
そこでまず深い凹型の方へ鴨居を押し込みます。
完全に入ってしまうと、柱間と同じ長さになりますから、柱間に水平に納まります。
次に、反対側の凹に鴨居を送り出してやります。
すると、柱にはいっていた6〜7ミリが迫り出してきて、反対側の柱に2〜3ミリ入ります。
しかし、元の柱にはまだ半分残っていますので、これで鴨居は落ちなくなって固定できたというわけです。
このままでは、何かの拍子に、戻ってしまうかも知れませんから、凹の上部に(くさび)をうちこんでおきます。
すると、これでもう鴨居はどんなことをしても、外れないわけです。


 大入れの良いところは、柱と鴨居が仕口となって絡んでいるために、それぞれの材の伸縮がお互いに規制しあって、安定した状態を維持できることです。
ところが、柱を傷つけることは、最上の仕事と呼ぶには、いささか抵抗があります。
そこで源造(げんぞう)です。
ゲンゾウは細工は単純だけれど、長い年月にわたって新築のときと同じ仕上がりを保つためには、用いる材は素性がよく、完全乾燥材であるという完璧さが要求されます。
ですから、柱の乾燥による収縮の読み、鴨居の長さの縮みに対する配慮など、新築後の推移を読んで細工をするのなら、ゲンゾウが最上の仕事と言うことになります。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい