ハードとしての確実な家作り : 実践編

8.金属建具工事

 外壁の施工と同時、いやそれ以前に、開口部の処理をしておきます。
そうしないと、壁との境が、どこまでだか判りません。
外壁につく窓や扉は、障子などの内部に使われる建具とは、少し性格が違います。
そこで、外部につく建具回りを一括して、開口部と呼んでいます。


 かつては開口部にも、木製の建具を使っていました。
そのため、建具工事といえば木製建具をさし、金属製建具なる項目はありませんでした。
しかし、今日では、木製建具は高価で、よほど潤沢に予算がないと、外部に木製建具は使えません。
そのうえ、都市部では、外壁に木製建具を使うのは、防火上も認められていないため、どうしても金属建具を使うことになります。

 金属建具というと、アルミサッシです。
アルミサッシは、気密性の確保、雨じまいの向上など、住宅性能の向上に多大な貢献をしてきました。
金属特有の冷たい質感さえ除けば、アルミサッシは優れています。
また、サッシの登場は、職人の職域区分にも変化を与えました。
と言うのは、それまでの建具は、動く部分、つまり、障子とか扉だけを、建具職人がつくっていました。
そして、建具を動かす溝や枠は、大工職の職域でした。
ところが、サッシという外来の考え方は、枠も建具も一体物ものとして考え、建具と枠共に同じ職人が取り扱っています。


 柱を垂直にたてる努力はすでに述べましたが、それでも残念ながら、どの柱も完全に垂直というわけにはいかず、施工誤差、木の伸縮による誤差を零にはできません。
上手な大工は、誤差を限りなく少なくするわけですが、それでも零ではありません。
今までは、建具と溝や枠の間での、すりあわせが大切でした。
大工のつくった骨組に、つまり、誤差のある柱や枠に、いかにうまく建具を建て込むかも、建具屋の腕でした。

 アルミサッシは、建具と枠が一体となったため、建具と枠との間の施工誤差はなくなりました。
ところが、その余波というか、しわ寄せというか、つなぎの部分が、外壁と枠との間にきました。
外壁工事のところでも述べたように、建具枠と外壁材の取り合いがうまくないのはこのためです。
部分の進歩は、必ず隣に波及し、何等かの影響を与えます。
せっかくの改良が、全体としての改良につながらない場合さえあり、難しいところです。

 アルミサッシになって住宅の趣は変わりましたが、機能的にはよい方が多くなったと、匠事務所は考えています。
というのは、枠と外壁の納まりは、屋根やがあるために、雨に対してそれほどきびしく考えなくても無事だったからです。
屋根や庇が、大量の雨を止めてくれるので、漏水の事故は比較的少なかったわけです。
しかし、最近の都市部ですと、敷地が狭くなっており、屋根や庇がだせない場合もあり、こうしたときは、慎重に施工することが望まれます。

 アルミサッシは、サッシ屋によって組み立てられて、大工によって建て込まれます。
その建て込みは、と同様に加重をかけるため、本当は外壁の重さをかけてから、つまり、外壁の施工後にしたいところです。
しかし、サッシを建て込まないことには、外壁の区切りがつかないので、それには目をつぶってサッシを建て込みます。


 サッシの建て込みには、水平の決定、これが非常に大切です。
垂直は上棟の時に確認してありますが、水平は土台敷きの時に確認しただけでした。
今や、各部分が馴染んでもいます。
屋根などの加重がのって、相当変わったはずです。
そのためここで、水平をもう一度確認します。
水平をだすには、レベルという器具を使うことは前述しました。
レベルは精度も高く、よい機械なのですが、二人でないと使えません。
一人の時は、昔ながらの水盛り管を使います。
精度はすこし落ちますが、簡便な道具です。

 
垂直、水平、直角
 上手な大工職人か、どうかを見分ける方法は、いくつかありますが、そのうちの一つは、垂直、水平、直角が正確にだせるかどうかです。
できあがった家に住んでしまえば、床は水平だし、柱は垂直だと思って、誰も疑ってみもしません。
住んでいる人に判るほどに、くるっていたら、職人失格です。
ところが、仮設工事でも述べたように、垂直、水平、直角は、自然界には存在しないものです。
存在しないものを、どこからか計りだすのですから、そこに技術が必要になってきます。
木造住宅では、水盛り管を使おうと、レベルを使おうと、どちらでも構いません。
職人の腕というより、気配りです。

 腕と呼ばれるものは、ある程度の訓練によらないと、修得できません。
道具使いがその典型です。
しかし、水平をだすことは、決められた手順を踏めば、誰がやっても必ず同じ結果がえられます。
一度教えられれば、誰にでもできます。
道具使いのような、長い訓練は不必要です。
つまり、初心者と熟練者の違いがありません。

 この水平を出す技術が、職人の腕を見分ける第一の方法だ、と匠事務所では考えています。
名人とそれ以外を分けるものはなにか。
それは、正確な仕事をしようとする職人の心配りだと、匠事務所では考えています。
もっと言うと、職人の人間的な性格です。

 丁寧な職人は、丁寧な仕事をしますし、大胆な性格の職人は、大胆な仕事をします。
大まかな性格の職人ですと、このくらいでよいだろうと判断する基準が甘く、多少の誤差には目をつぶります。
すると、建ち上がった家は、必然的に水平や垂直が甘いものとなっています。
しかし、こう言ったからといって、誤解しないでください。
彼には手抜きをしようという、悪気はないのです。
彼なりに一生懸命やっています。
ところが、それでも彼の仕事には、誤差が大きいのです。

 誤差の大きい、つまり性格的に大まかな職人には、いくら工事費を潤沢に与えても、大まかな仕事しかできません。
きびしい性格の職人ですと、誤差を極限まで、小さくしないと気が済まないわけです。
職人は、いつもの仕事以上に基準線が狂っていると、彼はもう気持ちが悪いのです。
職人の腕の半分は、性分と言うことになります。
水平や垂直があやしければ、何度でも何度でも確認しなおす姿勢、これが上手な職人の第一歩です。

 人間ではなく、物を相手とする技術者、これが職人の気性、頑固一徹な性格を作り上げていきます。
長年にわたる物相手の仕事が、職人の気質をつくり、こうした気質を持ちえた人だけが、名人、上手となっていくわけです。
熱き心を持つことは、初心者でもできます。
初心者でもできる水平という基準だしが、職人の腕判断の第一歩だということがお判りいただけたでしょうか。

 実際には、水平の確認はどうするのでしょうか。
水平を出すことはきわめて重要なため、実際の現場では初心者には決して担当させません。
簡単な作業であっても、それによってすべてが決まってしまうため、現場の責任者の仕事です。

 実際の作業は、仮設工事の時と同様に、レベルや水盛り管で、柱などの隠れてしまう部材に、印をつけて回るだけです。
すると、その墨がすべて水平になっていますから、そこから、何センチ上がりとか、下がりとか計って、床面とします。
すると、床面はどこでも水平となります。
そして、鴨居天井などは、床面から何センチ上がりと、計ればよいわけです。

 家中の間柱につけた、水平面の基準から計って、アルミサッシの枠を建て込んでいきます。
これで、アルミサッシは垂直水平に建て込まれます。
アルミサッシは、木製建具ほどには、微妙な調整を必要とはしませんが、それでも水平、垂直でないと、困ります。
サッシの枠が建て込まれると、これで、外壁の決まりをつけることができるようになりました。

 アルミサッシにも、いろいろな形式があります。
一番良く使われる「引き違い」。
引き違いを使うと、日本的な和風の外観になります。
そのほかにも、「突き出し窓」「内倒し」「回転」「ジャロジー」……
それぞれ、ところに応じて使い分けます。
色も何色かあります。
いかにもアルミらしいシルバー色、ブロンズ、ゴールドなどなど。

 シルバーが最も安く、着色ものは一割くらい高価でしたが、今では同じ定価になっています。
アルミサッシは工業製品ですから、メーカーによって、つくられます。
JISBLなどの規格はありますが、違うメーカーがつくるものは、同じ呼称であっても微妙に異なります。
ですから、同じブロンズといっても、色が違うことがあります。
一軒の家では、同じメーカーの製品でそろえる方が無難でしょう。

 網戸や外部につける面格子も、セットになって市販されています。
設計図書には、こうした付属品も指定してあるはずですから、完成時はきちんと建て込まれるでしょう。

 アルミサッシは、メーカーの製品ですから定価商品です。
アルミ地金の変動によって、また、仕入れ先の違いによって、市販価格や値引き率は違いますが、原則として定価があります。
カタログが用意されていれていて、品番をメーカーに問い合わせれば、必ず定価はわかります。
ですから、金属建具工事は、工事費をおさえやすい工種です。


 アルミサッシが普及した結果、室内の気密性があがりました。
しかも、暖房が強力になったため、結露が発生しやすくなりました。
いまだ完璧な結露対策はありません。
室内の空気の流れをよくするとか、換気をまめにすることが、結露防止の近道でしょうか。
アルミサッシといえば、付きもののガラスについては、ガラス工事として、後述します。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい