ハードとしての確実な家作り : 実践編

6.屋根工事   その1

 野地板つまり屋根下地までは、大工の領分でした。
ところが、屋根葺工事となると、また別の職人が登場します。
鉄筋コンクリートの建物では、陸(ろく)屋根と呼ばれる水平な屋根もありますが、木造の建物では、屋根にはたいてい勾配がついています。
屋根の形は、多くが切り妻(きりずま)か寄せ棟(よせむね)でしょう。
しかも、大きく分けて、屋根葺き材料は、次の三つから選ばれます。

1 瓦 (材工共20、000〜25、000円/坪、平瓦一枚200円くらい)和瓦、洋瓦あり  屋根勾配   4/10以上
2 石綿スレート (材工共13、000〜17、000円 /坪)クボタコロニアルが有名     屋根勾配   3/10以上
3 金属板 (亜鉛鉄板で10、000円/坪前後)着色亜鉛鉄板、着色ステンレスなど   屋根勾配   1/10以上

 以上が一般的です。

金属板の中には、銅板などもありますが、ほとんど見栄の世界です。
社寺建築のように長寿命の建物で、それふうの外観が問題ならいざ知らず、住宅では銅板を使うのは無意味です。
なぜなら、住宅は建物の物理的な寿命が尽きるずっと前に、機能的な寿命がきてしまうのですから。
まだまだ使える建物が、住みづらいという理由だけで取り壊されています。

 銅板と亜鉛鉄板の違いは、耐久性だけです。
遮音性能、断熱性能などその他の性能はまったく同じです。
ですから、屋根葺き材料にだけ、長寿命のものを使用してもアンバランスで、まったく不経済です。

 を選べば瓦屋の、金属板を選べば板金屋の仕事となります。
コロニアルは、比較的新しい材料ですから、専門化しておらず、瓦屋でも板金屋でもどちらも施工するようです。


 まず、瓦です。
日本でも、瓦の歴史は古く、また、世界をみまわしても、いたるところで使われています。
瓦は焼物ですから、耐久性、耐火性ともに大変優れています。


 古今東西を問わず、建物の屋根をどうするかは、みな悩んだようです。
建物を木でつくろうと、石でつくろうと、屋根をどうするかは大問題でした。
金属が手軽に入手できなかった時代、瓦がないとすると、屋根は茅(かや)とか藁(わら)で葺くか、杉皮とか、割竹・木片で葺く以外には方法がありませんでした。

藁葺の屋根は火に弱く、また、維持に手間がかかりました。
ですから、瓦で屋根を葺くのは、大変な発明で、誰もが憧れたことと思います。


 ちょっと考えると、屋根葺き材料は、長いものの方が都合がいいように思われます。
瓦のような小片を敷き並べるより、長い竹のような物を並べるほうが、雨仕舞い(あまじまい)はずっと良さそうです。
継目のない長い物なら、水の漏りようがありません。
しかし、昔から瓦は小さいものです。
実はここに、古くからの苦心の塊が、凝縮されていると、匠事務所では考えています。

 
瓦の隙間

 おかしなことをいうようですが、瓦は雨がもります。
瓦で雨を止めることは不可能です。
昔も今も、瓦は屋根葺材としては完璧ではありません。
と言うのは、雨は上からばかり降るとは限らないからです。
台風の時を想像していただけば判ると思いますが、風まじりの雨は横から、また時としては下からも降ります。
瓦は、図のように重ねてあるだけですから、吹き降りの時には、瓦の重ね目から簡単に雨が浸入してしまいます。
これは建築を少しでも知っていれば、誰でも知っていることですから、昔の人も知っていたはずです。

 なぜ、彼らは長物を作くらなかったのか。
まず焼物では、大きな物が作れなかった、ということが想像できます。
焼物である瓦は、焼きむら、焼き縮み、焼き歪がどうしても発生してしまいます。
今日の工業製品のような、完璧の品質管理はできません。
焼物は大きくすればするほど、歪が激しくなりますから、大きな瓦をつくるのは至難のことでした。
しかし、必要は発明の母というとおり、もし本当に大きな瓦が必要だったとしたら、なんとかして、大きなもしくは長い瓦が制作されたはずです。
(長い焼物としては、土管が制作されています。)

 一見すると、同じように見える瓦も、実は大小があります。
今日普通に使われているのは、一坪を 56枚で葺きます。
(産地や・種類によって、50〜60枚まで若干の違いがある。)
塀や門の屋根を葺く瓦は、小瓦といって、小さいものです。
これは、一坪を80から100枚で葺きます。
手間もかかりますから、当然のこととして小瓦葺きは高価です。


 小瓦があるとすれば、反対の大瓦もあります。
大きな建物では、瓦も大きくしないと、不釣合いです。
奈良は東大寺の大仏殿の瓦は、普通の瓦の約四倍の大きさがあります。
こうした例を考えると、大瓦が制作できなかったわけではなさそうです。
では、なぜ瓦は現在の大きさになったのか。
本当はもっと大きくしたかったのに、技術的な制約で現在の大きさになったのではありません。


 雨仕舞のためだけなら、大きなビニールシートのような非透水性の物で、屋根を覆ってしまえば最良なわけです。
そうした意味では、今日の長尺カラー鉄板がそれに近いものです。
ところが、昔から、屋根葺き材にはもう一つの役割がありました。
それは、通気です。
ゴムひきの雨かっぱを着たときのことを思い出してください。
確かに雨には濡れませんが、自分がかく汗で濡れてしまいます。
このあたりの事情を、次で考えてみましょう。


次に進む            目次へ戻る

    

「タクミ ホームズ」も参照下さい