ハードとしての確実な家作り : 実践編

3.木工事    その1

 基礎工事が終わり、しばらく放置してあった現場も、どうやら土となじみ、落ち着いてきた頃でしょう。
鉄筋コンクリート製の基礎のうえには、土台も敷き終わり、あとはなどの木組をのせるばかりです。

 基礎は鳶(職)の仕事でした。
この先からは、木工事、つまり大工の仕事へと移ります。
昔から、家作りは大工次第と言われるくらい、大工の責任は重大です。
普通言われる大工には、二つの意味があります。
まず、建築工事の総括責任者つまり請負者=棟梁(とうりょう)という意味です。
もう一つは、木をあつかう職人としての大工職という意味です。
ですから、これ以降、総括責任者であり、かつ大工職の長という意味では、棟梁という言葉を使います。
そして、大工とだけ言った場合は、木工職人をさしています。

 昔は、自分の山から木を伐りだして、製材にかけて、それを何年もねかしてから、家を建てるということもありました。
しかし今日では、製品化された木材を、材木屋から買って来るのが一般的です。
立ち木、つまり、地面から生えている木が、いきなり柱となってしまうわけではありません。
その過程は、また好奇心と興味の対象となるのですが、ここでは、材木屋に並んでいる材木から話を始めることにします。


 材木屋にいきますと、厘場(りんば)と呼ばれる貯木場には、独特の臭いをもった、たくさんの材木がたててあります。
それ等は、さまざまな規格に従って、大小のグループに分けてありますが、大別すると、次の三つになります。
構造材と造作(ぞうさく)材と人工材(適切な名前がないので、便宜的にこう呼ぶ)です。


 構造材とは家の骨組になる材で、、土台と言った荒物です。
それらは、(カンナ)で削られることなく、そのまま使われます。
造作材とは、敷居(しきい)や鴨居(かもい)用材また天井板などの化粧物です。
もちろん、構造材も、造作材も、両方とも木材ですから、本質的な違いがあるのではありません。
また、柱のように、構造材でもあり、化粧材でもあると言ったものがありますから、厳密に分けることはできません。

 次の人工材とは妙な名前ですが、これは工場で作られるものです。
例えばベニヤなどです。
また、材木ではありませんが、断熱材石膏ボードなども材木屋あつかいになっています。

 
天井上と屋根のあいだを小屋と呼ぶ

 構造材は、(けた)より下の材と、屋根まわりに使用される小屋材に、大別されます。
小屋材とは、桁、梁(はり)、そして母屋(もや)、(つか)、棟木(むなぎ)、垂木(たるき)、野根板(のじいた)と言ったものです。
最近は、小屋材もきちんと製材された角材が使用されますが、かつては、どこかに丸太の名残をとどめた材を使いました。
これは、製材が木挽き(こびき)職人による手挽きだったため、角材を作る手間をはぶいて、必要最小限の製材で済ませたためでした。


 小屋材は構造を負担するだけで、屋根と天井のあいだの小屋裏に隠れて、まったく見えません。
ですから、見て美しいことは求められず、強度だけを必要としました。
それには、何よりも木の芯を通すことでした。
そのためもあって、丸太からきちんと角材をとりださず、一部丸太の表面を残したまま、製材されました。

 こうした丸太の部分を残した材木を、押し角(おしかく)といいます。
押し角は、より少ない材積で、正角(しょうかく)材と同じ強度(場合によってはそれ以上)を保てます。
逆に言えば、より小径材から同じ強度の製品が得られますから、正角材より安いのが普通でした。
ところが、最近は、大工手間が高くなったため、加工に手間のかかる押し角は、あまり見かけなくなっています。
それともう一つ、外国産の材が安く輸入されるため、内地材が駆逐されたこともあります。
外材は、外地挽内地挽がありますが、いずれにせよ、正角材となります。

 同じ小屋材でも、長い距離を下に柱なしでとばすためには、太い丸太材がそのまま梁として使用されました。
太い丸太のままの材が、天井裏つまり小屋の中を縦横に走っているのを、古い民家で見ることがあると思います。
あれほどたくさん使用することは今日ではまれですが、丸太材は木の目が切断されてないため、同寸法の角材にくらべると、ずっと丈夫です。


 丸太材は、表皮を釿(チョウナ)ではつり、そのまま使用する名栗(ナグリ)仕上げの場合と、両側をはつり落として、太鼓(タイコ)状の断面にしてから使用する場合があります。
ナグリ仕上げは、いわば化粧的な使い方で、今日ではあまり見かけません。
丸太の両側は荷重を支えるためには役立ってはいず、むしろ、梁の自重を増すだけで、百害あって一利なしです。
ですから、構造材としてだけを考えれば、タイコ状に落とすのは理にかなった使用法です。


 丸太材は、建築用の木材種の中では少し変わっており、いろいろな樹種を使います。
角材は、と言った針葉樹ですが、丸太材はいわゆる雑木つまり広葉樹を使用します。
(マツは、針葉樹だが、丸太材としても使用する)
しかし、丸太の扱いは手間がかかるため、今日ではあまり使われなくなりました。
それに替わって、角材が使われる昨今です。



断面寸法 断面寸法

3寸5分(105) 4寸(120) 3寸5分(105) 4寸(120)
3メートル
4メートル
6メートル × ×

 桁から下に使用する木材で、金額的に大きいものは、何と言っても柱です。
このあたりから、木材の価格体系は複雑になります。
柱は正角と呼ばれ、きちんと正方形断面に製材されています。
木材市場を流通しているものは、規格品です。
柱は、3メートル(十尺)、4メートル(十二尺)、6メートル(二十尺)物が多く、6メートル物は、一階二階を通す、通し柱として使用されます。

また、太さも 105ミリ(三寸五分)角、120ミリ(四寸)角の二種類は、常備品としてどこの材木屋にもあります。
そして、それぞれ杉と檜(ひのき)の二種類が用意されています。
杉材の方が安価で、檜のほうが高級品と称されているのは、周知のとおりです。
(ただし杉にも、高価なものもある)


 これだけなら木材の価格は、特別に複雑ではないでしょう。
太さ長さは、体積の単位量(=材積)に換算してしまえば、同質のものとしてあつかえます。
また事実、概算見積りなどの時には、1m3(立米:りゅうべい)という単位量を使用します。
ところが、材木のやっかいなところは、これに等級と産地が加わってくることです。
とりわけ、のあるなしが建築主に問題とされるため、市場もそれを反映して、節のあるなしによって、大変な値段のひらきを見せています。
当然、節のないものつまり無節(=無地)物は、高価です。
どれくらい違うかと言うと、2桁も違うことすらあります。


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「タクミ ホームズ」も参照下さい